【日本語】他者の文化について知らなければ知らないほど、人間は恐れを持つ。=The less you know about the other person's culture, the more you fear. 【英語】

Martin Scorsese監督とは?

2002年の『ギャング・オブ・ニューヨーク』以降、それまでのスコセッシ作品とは比較にならない制作費をつぎ込んだ映画を発表するようになり、その3作品全てで主演を張ったのがレオナルド・ディカプリオである。『ギャング・オブ・ニューヨーク』はスコセッシ自らが1970年代から温めていた念願の企画で、ディカプリオが参加することで興行価値を見込まれてやっと出資が実現した。その後の『アビエイター』は逆にディカプリオ自身のプロダクションの旗揚げ作品で、スコセッシに監督を依頼して制作した。スコセッシがこの作品と『ディパーテッド』を監督した背景には『ギャング・オブ・ニューヨーク』の興行不振があったものと見られるが、皮肉にも自身の企画では無いこれら2作品が、アメリカ国内での興収1億ドルを突破した。2013年の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』では自身の監督作で歴代最高の全世界興行収入を記録した。

遠藤周作の小説『沈黙』を原作とし、マーティン・スコセッシが監督、ジェイ・コックスが脚本を務める。出演はアンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライヴァー、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシら。日本ではKADOKAWAの配給で2017年1月21日公開。
過激な拷問や処刑のシーンなどが多く、PG-12指定だが、アメリカではR指定。劇中ではBGMの音楽はほとんど流れない。

17世紀、江戸時代初期― ポルトガルで、イエズス会の宣教師であるセバスチャン・ロドリゴ神父(アンドリュー・ガーフィールド)とフランシス・ガルペ神父(アダム・ドライヴァー)のもとに、日本でのキリスト教の布教を使命としていたクリストヴァン・フェレイラ神父(リーアム・ニーソン)が日本で棄教したという噂が届いた。尊敬していた師が棄教したことを信じられず、2人は日本へ渡ることを決意する。
2人は中国・マカオで日本人の漁師にしてキリシタン(キリスト教徒)であるキチジロー(窪塚洋介)の手引きにより、日本のトモギ村に密入国する。そこでは隠れキリシタンが奉行の弾圧に苦しみながらも信仰を捨てずに祈り続けていた。司祭はなく、「じいさま」と呼ばれる村長のイチゾウ(笈田ヨシ)だけが洗礼のみを行えるという環境だった。2人は村人達と交流を交わし、布教活動を行っていく。キチジローはかつて弾圧を受け、踏み絵により棄教を示したが、自分以外の家族は踏み絵を行えず、眼前で処刑されたのだという。罪の意識を背負い苦しむキチジローは自分の村である五島列島にも2人の宣教師を招き、布教を広める。そこでフェレイラの手掛かりも掴み、任務は順調かと思えた。
しかし、キリシタンがトモギ村に潜んでいることを嗅ぎ付けた長崎奉行・井上筑後守が村に訪れ、2人の宣教師の身柄を要求した。村人達は必死に匿ったが、代償としてイチゾウ、キチジロー、そして敬虔な信者であったモキチ(塚本晋也)を含む4人の村人が人質となった。奉行は踏み絵だけではキリシタンをあぶり出すことは困難と考え、「イエス・キリストの像に唾を吐け」と強要した。4人の内キチジローを除く3人は棄教しきれず、処刑されることとなった。
自分達を守るために苦しむ信者達を見てロドリゴは苦悩する。

「なぜ神は我々にこんなにも苦しい試練を与えながら、沈黙したままなのか―?


Martin Scorsese:

This just took years of reading and immersing yourself in the period and in Japanese culture,
ともかく何年も、本を読んで、自分をその時代と日本文化の中に没入させることが必要でした。

whether it's reading books put together by Donald Keene ... .
(日本学者の)ドナルド・キーンによってまとめられた本を読むことであれ、(そのほかの書物であれ)。

Everything going back to Japanese silent films, reading Sosukei? ... Soseki, Dazai, Tanizaki, ... . I mean, you go through all that.
日本の無声映画までさかのぼって、全て(の資料)です。(例えば)ソウスケでしたっけ? それを読むこととか。(正しくは)漱石でしたね。太宰、谷崎、つまりそういうものを全て見るのです。

It's more about culture, and it's more about what's happening in the world today also.
(この映画で扱っているのは宗教というよりも)もっと文化の問題なのです。もっと今の世界で起きていることの問題なのです。

Interestingly enough, that came out at this time.
この時期に、この映画が出たことは面白いですね。

The less you know about the other person's culture, the more you fear.
他者の文化について知らなければ知らないほど、人間は恐れを持つ。

The more you fear, the more there's violence.
そして恐れれば恐れるほど、もっと暴力が増える。

And here, it's a total clash. And one has to give to the other.
そしてこの映画では、(2つの文化の)完全な衝突なのです。そして、片方がもう片方に完全に譲らなくてはならない状況なのです。


遠藤周作の小説『沈黙』を自身が読んだのは中学生の頃でした。
課題作ということで読んだのですが、意味がまったく理解できませんでした。
宗教とも希薄な関係にある上に、異文化との衝突といった問題とは疎遠だったからでしょう。

しかしこの一文でこの作品の意味がわかりました。

この小説や映画では、(2つの文化の)完全な衝突なのです。

そして、片方がもう片方に完全に譲らなくてはならない状況であるというのは、おそらく今のアメリカやユーロなどの移民や宗教問題を多く抱える国家には必要な作品なのかもしれません。